秩序と理不尽
体育会の部活というと、厳しい上下関係をイメージする人も多いと思います。
今回は、私が大学4年間のうちに(主に下級生のときに)経験した、理不尽な無茶振りをご紹介します。
「何か面白いこと言え」
先輩からの無茶振りでよくあるのが「面白いことを言え」「面白い話をしろ」的な命令です。
まず、当然ながら下級生に拒否権はありません。
その上で「先輩が面白いと思う」話をする必要があります。
ただし、体育会にいて、とりわけ幅を効かせているような人たちは、往々にして「コミュニケーションお化け」ばかりです。弱肉強食の世界はラグビーなどの競技の中だけに留まらず、練習前後の雑談、食事、合宿での共同生活など、ありとあらゆるコミュニケーションでしのぎを削って(?)います。テレビに出てる並の芸人よりよっぽど面白いんじゃないか、という人たちがゴロゴロしています。
そんな先輩の前で披露する面白い話・・・パッと出てきますでしょうか?私はそのとき、必死に記憶をほじくり返し、高校のときに先生に反抗したしょーもない話をして、案の定白けた空気になり、辛酸を嘗めた覚えがあります。理不尽さ、やるせなさ、そして不甲斐なさを感じました・・・が、逆にこういうスキルもあれば役に立つのだと身を持って知ることになり、会話やコミュニケーションに対してよりシビアに(?)取り組む姿勢が身についたように思います。
(雨が降ってても)「洗濯物乾かせ」
1年生はほとんど雑用がメインです。普段の練習で使うビブスや、合宿のときの先輩の衣類まで、洗濯の当番になります。天気が良ければ洗ってすぐに乾くものの、雨の日はなかなかそうもいきません。勿論、乾燥機なんていう贅沢な装備もなく、申し訳ない顔して半乾きの生臭い洗濯物を差し出します・・・。
すると「臭い、乾かせよ」と突き返されます。天気が・・・なんていう泣き言は聞き入れてもらえません。合宿中はひたすら晴れるのを祈るのみでした。今思えば、こんなのは構造的な問題であって、今でこそアマゾンで安いヒーターを買うとかいろいろ対策方法もあったんでしょうが、あの閉鎖された空間で何よりも重要視されたのは「理不尽の徹底」だったように思います。私も上級生のときには、下級生に(幾分かマイルドに)理不尽を言っていました。今思えば、本当にアホくさい話です。しかし、私自身この経験があるから、スタンフォード監獄実験などもリアルに起こりうると思えてなりません。
「起床の携帯のアラームは音禁止、バイブのみ」
これは合宿での話です。部員はポジションごとに大部屋に分けられ、一年生から4年生まで10人前後の部屋で寝ることになります。
一年生は、朝食の準備が仕事です。100人近い部員全員分の食事(作ってもらったものの配膳など)を、先輩たちより早く起きて準備しにいきます。当然、練習に疲れて眠っている先輩たちを、物音を立てて起こすなんて言語道断。携帯(当時はスマホは普及しておらず)のアラームは、音が出ない設定にして、手に握りしめて寝ていました。うっかり寝過ごさないように、毎晩緊張しながら就寝したのを覚えています。
まとめ
私が経験した体育会の部活では、一般的には理不尽だと思われるようなことがまかり通っていました。排他的で狭いコミュニティでは、ある程度の人数が集団行動するために、秩序が必要です。上意下達のメリットが享受できる一方で、構成員には大きな精神的負担となるのも事実です。
実際、私が経験したものはまだまだ甘い方で、もっとキツイ噂話は他校や過去の逸話などでもよく聞きました。普通の感覚からしたら異常と思えることも、正当化されてしまうのが「狭い集団」の怖いところです。人間関係の問題は尽きることがありませんが、その一例として「世の中こんなこともあるんだ」と、この記事を読んで知ってもらえたら幸いです。
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