情報の受け取り方
今ではテレビや新聞だけを盲目的に信じているのは一部の高齢者くらいで、多くの人はネットを使っていろんな情報を得ています。その中には全然違った意見もあって、一体何が正しいのか自分で判断するのが難しいことばかりです。
そんな昨今、数字を使って説得力を出そうとする説明は多く見受けられます。「〇〇番目に多い〜」とか、「平均と比べると〜」とか、「はいと答えた人の割当は〇〇%」などです。一見これらの数字は確固たる根拠のもと、揺るがない説得力を持っていそうですが、多くの人が誤解している側面もあります。
今回は、物事をなるべく正確に見極め、かつ人に騙されないために必要な、数字にまつわる「3つの誤解」について解説します。
順位の誤解(範囲と尺度)
「日本で一番の〇〇」とか「週間ランキング」みたいなものは、誰でも直感的に物事を把握するのにとても便利な指標です。ただしこの順位を見るときに気をつけなければいけないのは、それが「どの範囲で、どの尺度で」順位付けされているかです。
例えば、ある学校のテストの点数なら、その学校内にいる人で共通の試験問題を競っているから、「どの範囲で、どの尺度で」といったことは明快です。また、大人数が所属するアイドルグループでセンターを決める投票も、「特定のCDを買って、それについてくる投票券で応募したファンの数」という制限があるのも、多くの人が理解している順位付けの例です。
ただし、世の中にはこういった「範囲と尺度」を曖昧にしている順位付けもあります。「人気ナンバーワンスイーツ」と紹介されれば、人気がありそうで美味しそうなイメージですが、果たしてそれは「範囲と尺度」を明確にしているのでしょうか?範囲は日本全国?都道府県?地域?町内?また尺度は売上数?売上高?お客様アンケートの満足度ポイント?そしてそれらの集計期間は1年間?1ヶ月?このように、範囲と尺度のとり方によって順位はいくらでも変わってくる(誤魔化せる)のがわかります。世の中すべてのものが、テストの点数のようにはっきりとした基準で順位付けできるものではありません。
平均の誤解(外れ値)
私達は「平均」を知ると、物事を把握できたような気になります。成人男性の平均身長が170cmくらいだとか、平均年収が400万円くらいだとか、それによって「私は(あの人は)平均より上?下?」というふうに考えます。
この平均というのは、実は私達がイメージする「だいたいの中間の値」にならない可能性もあります。例えばあるクラスの20人の男子のうち、19人が165cmの前後1,2cmあたりで固まっていたとします。その中で一人だけ、180cmを超える身長の男子がいると、「平均値」はその高身長な彼に引っ張られて165cmよりも高くなります。(これは「外れ値」と呼ばれるもので、統計処理のときには除外したり、「中央値」という別の尺度を用いるなど、なんらかの対処をします)
「平均」というデータの裏には、膨大な数の標本(サンプル)があります。一人だけ高身長の男子の例のように、平均値だけではその実態が見えないことも世の中には多いため、これをそのまま安易に受け取ること実態を見誤る可能性があります。
割合の誤解(サンプリングバイアス)
『「今の政権を支持する」と答えた人は〇〇%でした』というようなニュースはよく目にします。何割の人がとか、割合を使って説明するシーンは日常に溢れています。
この割合という数字を扱うときも「その背景にある数字」を把握することが大事です。全体としてどれだけのサンプル(母数)のうち、そのカテゴリーに分類されるものがあるか、というのが割合の考え方ですが、あまりにも少ないサンプル(母数)だとその割合はかなり信頼性が低くなります(全体の傾向と言いづらくなります)。また、例えば「東大生の何割が正解できなかった」などの表現があったときに、東大生はきっとみんな頭がいいだろうと思いがちですが、あの人達の中にも知識や思考に得意なこと、苦手なことだってあります。割合をとるとき、そのサンプルには全体の傾向にたいしてなるべく偏りのない選択が必要になりますが、このことを「サンプリングバイアス」といい、より正確なデータを得るためにはとても重要な視点です。
ちなみにこのサンプリングバイアスは、順位付けや平均をとる際にも同じことが言えます。標本(サンプル)をどこからとってくるかによって、導かれる値も変わってくるということは、数字をみて判断する際には最も注意すべきポイントです。
まとめ
「順位」はその範囲と尺度によっていかようにも変わること、「平均」は外れ値の影響を受けること、「割合」はサンプルの取り方で結果が大きく変わることを解説しました。
これは、科学者や研究者にとっては常識の考えです。なぜなら、彼らは「正しい答え」を導き出すことが目的だからです。
一方で、意図的に人を欺こうとする人もこのことを知っています。なぜなら、彼らの目的は「事実と異なること」を人に伝えることによって、自分に有益なように動いてもらうことが目的だからです。
知識と思考力で武装して、この世知辛い世の中をタフに生き抜きましょう。
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