学生アスリートのジレンマ
体育会系の部活動というのは、かなり閉鎖的で特殊な環境です。
私は小学校5年生からラグビーをはじめ、中学、高校、そして大学卒業まで現役のプレイヤーでした。授業が終わった放課後と土日祝はほぼほぼ練習かトレーニングか試合です。常に週6日で活動し、ちょうどこの夏休みの期間は合宿や強化練習で2部練、3部練が当たり前でした。尋常じゃない食事量とトレーニング量で鍛えた体は膨れ上がって、身長の低い私は自分に合う「私服」を探すのが大変でした(当時の体重は今より20kg多い!)
学生スポーツは、学生の期間しかできません。卒業後にはプロや会社のチームでプレーを続ける人もいれば、私のように一切ラグビーをやらなくなる人もいます。ラガーマンでなくなったあと、必死に鍛えて作り上げた体は無用の長物であって、社会に出ればそんなものより「仕事に役立つ能力」が最優先で求められることになります。
大学の部活では、卒業と就職を控えた4年生の中で自嘲気味に「社会復帰」というテーマでその話題が出てきます。学生生活から社会人生活への切り替えという意味と、「一般社会に合わせた習慣と体作り」を視野に入れなければいけないという意味です。これまでのようにトレーニングに時間はとれなくなるし、現役時代と同じ感覚で食事を取っていれば間違いなく太ります。今まで当たり前にしてきた習慣を変えるというのはものすごく大変で、しかも周りは自分と同じようなアスリートではない場合がほとんどです。部活をやっている人は、ある種「自分たちは特別」という考えを大なり小なり持っています。学業をする傍ら、遊ぶ時間を犠牲にして、バイトで稼いだお金も部活動の用具や移動などに使う。そんなストイックな状態であることにプライドを持ちながら、自由な学生生活を送っている他の学生たちを羨む気持ちも持っています。社会に出ればそういう人たちと協力していかなければならないのが、精神的に負荷のかかることだということも容易に想像できるからこそ「社会復帰」が彼ら(私たち)の大きなテーマとなってきます。
まとめると、学生時代に体育会系の運動部で活動していた学生は、就職して社会に出るとき、自分のこれまでの習慣や体をガラッと一変させ、またこれまで全くカルチャーの異なる人達と協力して社会生活を送るという「社会復帰」のための2重のハードルをクリアする必要があるということになります。体育会系出身という人種について「そういうこともあるんだ」と知ってもらえたら幸いです。
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