賛否両論のベストセラー
SONYのスタジオ・モニターヘッドホンと言えば、MDR-CD900STがその代表的なモデルです。長年に渡って日本の音楽制作における業界標準であり続け、プロの現場では必ず目にすることでしょう。オーディオファンには知られていたのはもちろん、昨今のDTMの人気からアマチュア層でもユーザーが多く、楽器や機材の専門通販サイトのサウンドハウスでは常に売上上位にランクインしている、紛れもないベストセラー製品です。
ただし、あまりにも有名であるがゆえに、賛否両論様々な意見が出てくるのもこの製品の特徴です。それを踏まえた上で、音楽制作をやる人に、私はこれをオススメします。その理由を解説します。
聞く音の『基準』を作る意味
音楽制作をやる上で、音を客観的に聞くことはとても重要なことになります。自分の歌声や演奏をモニターするのにも、使用しているソフト音源や音色の加工の確認も、必ず自分の耳で聞くことになります。
そういった音(アンプなどの再生機器を通した音)は、再生機器によって違った音がします。そうすると、Aさんの歌声をヘッドホン1で聞き、Bさんの歌声をヘッドホン2で聞いてしまったら、AさんBさんの歌声の違い以外に、ヘッドホン1と2の音の違いの要素まで含まれて比較してしまうことになります。
このように、音楽制作では様々な音を聞いて判断する必要がありますが、そこではなるべく音(の元となっているもの)だけの違いを判別できるように、再生する機材は一定であったほうが好ましいと言えます。
そこで、広く日本で普及しているMDR-CD900stというヘッドホンを使う意味が大きくなります。1980年代の現場でも、2020年代の個人の再生環境でも同じヘッドホンが使えるし、北海道で作業している人でも沖縄で作業している人でも、同じヘッドホンが使えます。時間と場所を超えて、MDR-CD900stという基準のヘッドホンの音があることで、より客観的に音を判別できる耳を養うことができます。
使い続けるかどうかは好み
MDR-CD900stはおすすめのヘッドホンではあるものの、この音を気に入らない人が多いのも事実です。非常に音がクリアに聞こえて、一般的なリスニング用のヘッドホンとは明らかに質が違うのは明白であるものの、高音域が耳につく独特の音質が合わない人もいます。
実際、私も好んで使いたいと思うヘッドホンではありません。品質が高いことと、自分が好きかどうかはまた別の問題です。私は制作ではAKGのK240MK2を使用しています。こちらも十分質の高いモニターが可能で、高音域も自然に聞こえます。それぞれ長所、短所があるので、状況によって使い分けています。詳しくはブログ、YouTube動画でも解説しているので合わせてご覧ください。
まとめ
SONYのMDR-CD900STは、プロの音楽制作現場で長年の定番、そして標準モデルとなっています。自分が音を聞いて判断をするときに、一度でも900stの音を体験して知っていたほうが、より客観的に評価する耳を持つのに役立ちます。それを知った上で、900stの音が好きだったら使い続ければいいし、気に入らなければ他のヘッドホンに乗り換えればいいし、仕事で必要ならば『道具の一つ』と割り切って使うべきでしょう。音楽制作に本腰を入れて取り組みたい人は、2万円弱と少々値は張るものの、人生で一度は買って損はありません。

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