ど素人でも曲が作れる時代は来ると思う
テクノロジー関連の話題では、ここ数年は5GやAIがトレンドです。
当然、音楽の分野でもその話題については議論されていて、リモートでのセッションとか、AIによる自動作曲の将来性については既に多く研究が進んでいたりします。
平たく言えば、音楽を全然勉強していないど素人でも、鼻歌を歌ったり脳の信号を読み取ったりすればAIが勝手に曲を作ってくれるような、いわゆる「自動作曲」みたいなことは、将来的にはちゃんとしたものができてくると思います。
私は普段、楽曲制作を仕事でやっているので、その一連の作業を抽象化してプロセスごとに考えます。そうすると、曲のイメージとかテーマとかのトリガーは私たち人間が発するものですが、あとは割とパターン化されたものからの選択の作業がほとんどになってきます。もちろんこれは、そのパターンが膨大で、尚且つそれから選ぶ作業というのが職人技の領域です。膨大な時間をかけて音楽を聴いてきて、膨大な時間をかけてアウトプットを続けた脳味噌を使うことによって可能となるわけなので、簡単なことではありません。
ただし、パターンが多いだけで、ある程度アルゴリズムとして作ることはできると思うので、将来的には自動作曲のようなものが本格的な音楽を作ることは可能だと思っています。
なお現段階では、(私の知る限り)自動作曲と呼ばれるものは、人が聴ききたいと思う音楽作品を生み出すには至っていません。
自動作曲は人間を超えられない?
自動作曲の未来について、私は相当なクオリティのものができると予想します。そうなると、職業として音楽制作をやっている人は自分の仕事を機械にとって変わられてしまうのでしょうか?
そこに関して、私は「自動作曲は人間に勝てない」と言い切れます。それは、AIによる自動作曲の技術は、人間の後追いだからです。
自動作曲は、過去に人間が作った音楽のデータを集めてパターン化して、そこに一定の介入(私たち人間の思考とか)を挟んで音楽を作ります。つまり、これまでの曲の統計的な答えでしかなく、そこに新たなアイデアが生まれることがないわけです。
一方の、私たちの音楽制作は、パターン化したものからの選別という点では、やがて機械には完全に負けるでしょう。記憶できるパターンの量もメモリも、人間の脳が高性能なコンピューターに勝つことは不可能です。私たち人間はよく忘れるし、感情に左右されるし、非常に不安定なパソコンみたいなものが頭に入っていると言えるでしょう。
だからこそ、音楽を作れるんだと思います。
音楽は人間の生命エネルギーそのものです(と、私は解釈しています)。データにすればたった数MB程度の情報量だとしても、デジタルで聴ける古今東西様々な音楽には、人間の生命エネルギーが刻み込まれています。もし、多くの人がいいと思う音楽の最適解(みたいなもの)を寄せ集めた曲が素晴らしいものならば、人々は過去の名曲を聴かなくなるでしょう。しかし実際は、今でも多くの人が、過去の名曲を何度でも聴きます。そこには音楽理論では説明できない、アンバランスなものもたくさんあります。でもそのアンバランスさが人の心に訴えかける要因であり、優秀な機械には絶対に不可能な部分になります。
仮に、自動作曲が人間の曲を上回る時が来るとしたら、それは本当の人工的な知性を作り出すことができた時でしょう。そんな時は、そもそも人間とは何なのかを再定義しなければいけない時かもしれません。
まとめ
昨今の技術発展は目覚しく、これまで人がやってきた仕事がどんどん機械に置き換わっていきます。
音楽を作る仕事も、大部分が機械にとって変わられるかもしれません。
ただし、それでいい音楽が作れたとしても、それが「人が聴く」音楽になるかどうかは別問題です。音楽は、作る人(奏でる人)と聴く人があって初めて成立します。自動作曲さんが「素晴らしい曲ができました!聴いてください!」といって出した曲が、Spotifyなどでバズるんでしょうか・・・?答えは未来にならないと分かりませんが、私たち音楽家は、ただひたすら人に対して聴いてもらえる音楽を追求していくことに、変わりはないでしょう。
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